2025/06/13 20:00
あさの5時台。東京の空がうっすら白むころ、凛子は代々木公園の外周に立っていた。ガーミンのボタンを押す前に、イヤフォンを耳にはめる。流れてきたのはThe PoliceのWalking on the Moon。
テンポに合わせて足を動かす。1キロで身体が温まり、5キロを越えたあたりで心の中の霧が晴れてくる。
恋人と別れて2ヶ月。
彼と一緒に走ったこの道も、今はただのアスファルトだ。
けれど、その味気なさが、逆にありがたい。
8キロ走ってアパートに戻ると、まだ朝の7時半。部屋にはサンダルウッドの香りがうっすら残っている。
コーヒーを淹れる前に、凛子はランナーズスパイスを手に取った。きょうは前から試してみたかったレシピを作ると決めていた。
【カリカリ豆腐のスパイス焼きとアマランサスタブレ】
<材料>(2人分)
・木綿豆腐 1丁(しっかり水切りしておく)
・ランナーズスパイス 小さじ1
・オリーブオイル 大さじ1
・レモン汁 小さじ1
・アマランサス 大さじ2
・ミニトマト 6個(半分に切る)
・きゅうり 1/2本(角切り)
・ミントの葉 適量
・塩 少々
<作り方>
1. アマランサスを茹でて冷ましておく。
2. 水切りした豆腐を厚めのスライスにし、ランナーズスパイスとオリーブオイルをまぶして10分ほど置く。
3. 熱したフライパンで豆腐を両面カリッと焼く。
4. ボウルにアマランサス、トマト、きゅうり、ミントを入れ、塩とレモン汁で味を調える。
5. 焼いた豆腐と一緒に皿に盛りつける。
シャワーを浴びて、豆腐とタブレの朝食をとるころには、心も身体も落ち着いていた。
完璧な朝。
カーテンを開けると、空はもうすっかり青くなっている。
スマホに、1通のメッセージが届いていた。ラン仲間のカズからだった。
「今朝、すれ違った?」
凛子は少しだけ笑ってから、返信を打った。
「たぶん。明日一緒に走る?」
すべては、朝のランから始まる。

走ることも、笑うことも、どちらも“整える”こと。
笑って走って、香りで締めくくる。
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▶ 次の話 【そして、走る|第2話 波と脚と、午前10時】