2025/11/07 20:00

新潟の魚沼地方を走っていると、雪がちらつき始めた。

十一月下旬の越後は、本格的な雪国の季節を迎えようとしている。

八海山の頂上付近はすでに真っ白で、里にも間もなく雪が降り積もることを告げていた。

 

今日は小千谷に立ち寄って、「へぎそば」を食べる予定だ。

つなぎに布海苔を使った独特のそばで、へぎという木の器に盛られることからその名がついたという。

 

そば処に着くと、美しく盛られたへぎそばが運ばれてきた。一口分ずつ小さく束ねられて、まるで花のように美しい。つるつるとした食感と、布海苔特有の弾力が印象的だった。

 

「なぜ布海苔を使うようになったんですか」と店主に尋ねると、興味深い話を聞かせてくれた。

 

「昔、この地方は織物が盛んでね。布海苔は織物の糊付けに使われていたんだ。それをそばのつなぎに応用したのが始まりなんだよ」

 

産業と食文化が結びついて生まれたへぎそば。雪国の長い冬に、保存の利くそばは貴重な食料だった。そこに地域の特産である布海苔を組み合わせることで、独特の食文化が生まれたのだという。

 

私は地元のそば粉と布海苔を手に入れて宿に戻り、そば打ちに挑戦してみた。

布海苔は水で戻してペースト状にする。

これがなかなか難しい作業だった。

 

【越後へぎそば(ランナーズスパイス仕立て)】

 

<材料>(4人分)  

・そば粉 400g

・ 強力粉 100g

・布海苔 10g

・水 約200ml

・薬味(ねぎ、わさび)

・つゆの材料:

・だし汁 400ml

・ 醤油 大さじ3

・みりん 大さじ2

・ ランナーズスパイス(Original) 小さじ1

 

<作り方>

1. 布海苔を水で戻してミキサーにかけペースト状にする

2. そば粉と強力粉を混ぜ、布海苔ペーストを加える

3. 水を少しずつ加えながらこねて生地を作る

4. 生地を薄く延ばして細く切る

5. つゆにランナーズスパイスを加えて香りを立たせる

6. そばを茹でて冷水で締め、へぎに盛り付ける

 

ランナーズスパイスを加えたつゆは、そばの風味を引き立てながら、体を内側から温めてくれる。

雪国の寒さに負けない、力強い味わいが生まれた。

 

夜、雪がしんしんと降り始めた。

窓の外は静寂に包まれて、雪国特有の音のない世界が広がっている。

こんな夜に、へぎそばを囲む家族の団欒を想像すると、胸が熱くなる。

 

越後の人々は、この厳しい自然環境を受け入れながら、豊かな食文化を育んできた。

雪に閉ざされる長い冬だからこそ、保存食の技術が発達し、家族の絆も深まったのかもしれない。

 

明日は十日町の方まで足を伸ばして、雪国の暮らしをもっと体感しようと思う。

 

 

(越後へぎそば )

 

新潟県の「へぎそば」は、布海苔をつなぎに使った独特の食感を持つ蕎麦である。「へぎ」と呼ばれる木製の四角い器に、一口分ずつ手繰って盛り付ける美しい姿が印象的だ。

布海苔という海藻を使うのは、雪国新潟ならではの発想だろう。つるりとした喉越しは、まるで雪解け水のように清冽である。

食べる人の心も、きっと澄み渡るに違いない。

 

 走る人に、土地の香りを。

一皿ごとに、走る風土を。

季節料理に合うスパイスを探す→


▶ 次の話 【走る料理人、秋の五品|第五品 土佐の風】