2025/11/10 07:00

十二月に入ったばかりの高知は、まだ温暖で走りやすい気候だった。桂浜から市内に向かって走っていると、太平洋の青い海が美しく輝いている。

坂本龍馬の銅像を横目に見ながら、今日の目的地である日曜市に向かった。

 

高知の日曜市は三百年以上の歴史を持つ伝統的な市場だ。新鮮な野菜や魚、そして郷土料理の材料が豊富に揃っている。

私の今回の目当ては「皿鉢料理」。

土佐の宴会料理として有名で、大皿に豪快に盛られた刺身や寿司、煮物が特徴的だ。

 

市場で新鮮なカツオを購入した。土佐といえばカツオのたたき。藁で豪快に炙って作るあの料理は、まさに土佐の男性的な気質を表している。

 

郷土料理店でカツオのたたきを注文すると、香ばしい藁の香りと共に運ばれてくる。表面は香ばしく炙られ、中は鮮やかな赤身のまま。にんにく、生姜、ねぎの薬味と共にいただくと、カツオの旨味が口いっぱいに広がる。

 

「この藁で炙るのが土佐流なんですね」と言うと、店主が誇らしげに答えた。

 

「そうじゃね。藁の香りがカツオに移って、それが一番うまい。昔、漁師たちが船の上で作った料理が始まりなんよ」

 

豪快で開放的な土佐の気質が生み出した料理。

海の恵みを大胆に、シンプルに味わう智恵がここにあった。

 

宿に戻った私は、購入したカツオを使って料理を始めた。

伝統的なたたきにランナーズスパイスを加えたらどうなるだろう。

 

【土佐カツオのスパイシーたたき】

 

<材料>(4人分)   

・カツオ(刺身用) 1節(400g)

・粗塩 適量

・ にんにく 2片

・生姜 1片

・ねぎ 2本

・玉ねぎ 1/2個

・ランナーズスパイス (Hot)小さじ1

・ポン酢 適量

 

<作り方>

1. カツオに粗塩をまぶしてしばらく置く

2. 強火で表面を炙り、氷水に取って締める

3. ランナーズスパイスを表面に軽くまぶす

4. 薬味を準備し、厚めに切ったカツオと共に盛り付ける

5. ポン酢をかけていただく

 

ランナーズスパイスの刺激が、カツオの力強い味わいに新しい深みを加える。

走った後の体にこの組み合わせは抜群で、疲労回復にも効果がありそうだ。

 

夜、桂浜を散歩しながら、太平洋の壮大な景色を眺めた。この大きな海を相手に生きてきた土佐の人々の豪快さを思うと、皿鉢料理の大胆さも理解できる。自然の恵みを素直に、ダイナミックに味わう、それが土佐流なのだろう。

 

五つの土地を巡って、それぞれの郷土料理と出会った今回の旅。

走ることで感じた土地の空気と、料理に込められた人々の思い。

それらが私の中で一つに溶け合って、新しい料理への理解と興味が深まったような気がする。

 

明日は室戸岬まで足を伸ばして、土佐の自然を心ゆくまで堪能してから帰路につこう。

 

 

(土佐のカツオのたたき)

 

 高知県の「カツオのたたき」は、新鮮なカツオの表面を藁で炙って作る豪快な料理である。室戸や足摺の荒波で育ったカツオを、土佐の男たちが勢いよく炙る姿は、まさに土佐らしい。

ニンニクや生姜、ネギなどの薬味をたっぷりのせて食べれば、太平洋の潮風を感じるようだ。

この一皿には、土佐の海と人の情熱が込められている。

 

 

~~後書き~~

 

この旅を通じて感じたのは、郷土料理と人々の暮らしの深いつながりである。

津軽のけの汁、会津のこづゆ、信州のおやき、越後のへぎそば、土佐のカツオのたたき。

どれも単なる食べ物ではなく、その土地の歴史と文化、人々の知恵と愛情が詰まった「生きた文化財」なのだ。

 

郷土料理には、その土地でなければ味わえない独特の魅力がある。気候風土が育んだ食材、代々受け継がれてきた調理法、そして何より、その料理を囲む人々の心。

これらすべてが揃って初めて、真の郷土料理が完成する。

 

現代社会では食の均質化が進み、どこでも同じような味が楽しめるようになった。それは便利で豊かなことではあるが、一方で地域固有の食文化が失われる危険性もはらんでいる。

若い世代に郷土料理が受け継がれず、作る人も食べる人も減っている地域は少なくない。

 

しかし、郷土料理は決して過去の遺物ではない。

時代に合わせてアレンジを加えながら、現代の食卓でも生き続けることができるはずだ。

「ランナーズスパイス」を使ったアレンジは、そのひとつの可能性を示したものだ。

伝統を尊重しながらも、現代のライフスタイルに合わせた新しい楽しみ方を提案することで、郷土料理は次世代へと受け継がれていくのではないだろうか。

 

「走る」ことで土地の空気を肌で感じること。

郷土料理は料理単独で存在するものではなく、その土地の自然環境、歴史、文化と密接に結びついている。

実際にその土地を訪れ、風景を見て、空気を吸い、人々と触れ合うことで、郷土料理への理解は格段に深まるのではないだろうか。

 

郷土料理研究とは、過去と現在、そして未来をつなぐ橋渡し的な作業なのかもしれない。

先人たちが築いてきた食文化の素晴らしさを再発見し、それを現代の言葉で語り直し、次の世代に手渡していく。そんな役割を担いたいと思う。

 

私の提案する料理が郷土料理の魅力を再認識するきっかけとなり、私の書く物語が実際に各地の郷土料理を味わいに出かけていただくきっかけになれば、これほど嬉しいことはない。

そして可能であれば、あなた自身の手で郷土料理を作ってみていただきたい。

きっと、その土地への理解と愛情が深まることだろう。

 

日本の郷土料理は、私たちの大切な文化遺産である。それを守り、育て、次世代に伝えていくことは、私たち現代人の使命ではないだろうか。

食を通じて日本の豊かな文化を見つめ直し、大切にしていく。

 

そんな気持ちを込めて。

  

*** おわり ***

 

走る人に、土地の香りを。

香りで結ぶ、土地と走者の物語。

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