2025/11/21 20:00

昭和二十二年

 

敗戦から二年。

焼け野原となった東京は、徐々にではあるが復興の兆しを見せ始めていた。進駐軍の統治下にあった日本で、スポーツ界も新たな息づかいを取り戻そうとしていた。

 

関東学生陸上競技連盟の仮事務所で、金栗四三は資料の山と向き合っていた。

戦争で中断された箱根駅伝の復活に向けて、彼は奔走していた。

 

「問題は資金と選手の確保たい」

 

戦死した選手たちの名簿を見つめながら、金栗は深いため息をついた。

しかし諦めるわけにはいかなかった。彼らの魂を受け継ぐためにも、大会は復活させなければならない。

 

各大学を回る日々が続いた。

早稲田、慶應、明治、中央、日体大...。どの大学も戦争の傷跡は深く、陸上部の再建は困難を極めていた。

 

「食事すらまともに取れない状況で、長距離走の練習など...」

 

ある大学の監督の言葉が、金栗の胸に突き刺さった。

しかし彼は諦めなかった。 

選手たちの栄養状態を改善するため、限られた食材で効果的な料理法を研究した。

 

【走るためのスタミナ丼】

 

<材料>

・麦飯 茶碗2杯分

・豚の細切れ肉 100g

・キャベツ 4枚

・もやし 1袋

・ ランナーズスパイス 小さじ2

・醤油 大さじ2

・みりん 大さじ1

・ラード 小さじ1

 

<作り方>

1. 豚肉にランナーズスパイスをまぶし、ラードで炒める

2. キャベツともやしを加えて炒める

3. 醤油とみりんで味付けし、麦飯の上にのせる

4. 熱いうちに食べて体力回復を図る

 

「これならなんとか配給の食材で作れる」

 

金栗は各大学にレシピを配布した。

僅かな材料でも、ランナーズスパイスの効果で体は温まり、選手たちの活力も徐々に回復していった。

 

そしてついに、昭和二十二年一月四日と五日、第二十三回箱根駅伝が復活開催されることとなった。

参加校は戦前より減ったものの、十三校が名乗りを上げた。

 

復活大会前夜、金栗は一人で大手町を歩いていた。

街にはまだ戦争の傷跡が残っていたが、人々の表情には希望の光が宿っていた。

 

「明日から新しい時代が始まる」

 

彼の呟きは夜風に溶けて消えた。

しかしその思いは、翌日の号砲と共に現実となるのだった。

 

一月四日朝、大手町の読売新聞社前に選手たちが集まった。

戦争を生き延びた者、戦後に陸上を始めた者。様々な背景を持つ若者たちが、同じ夢を抱いて立っていた。

 

号砲が響いた時、金栗の目には涙が光っていた。

六年間の空白を経て、ついに箱根駅伝が蘇ったのだ。

選手たちの力強い走りは、復興への希望そのものだった。

 継がれる走りに、香りの意志を。

一本の道に、一筋の香り。

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