2025/12/15 07:00

下駄箱の隅っこに、古い運動靴がありました。
名前は右足がラン太、左足がラン子。
もう何年も履かれていません。
新しい靴がたくさん来て、二人はすっかり忘れられていました。

「僕たち、もう走れないのかな」とラン太が悲しそうに言いました。

ラン子も寂しそうです。
「昔はたくさん走ったのにね。小学生だったタケル君と、毎日校庭を走ったよね」

二人は思い出に浸っていました。
タケル君は小学生の頃、毎日2人を履いて走っていました。運動会も、マラソン大会も、いつも一緒でした。
でも、タケル君は中学生になって、もっと新しい靴を買ってもらいました。

ある日、お母さんが下駄箱の片付け始めました。
「これ、もう小さくなったから捨てようかしら」
とラン太とラン子を手に取りました。

「待って!」と二人は心の中で叫びましたが、声は届きません。

でもその時、タケル君がやってきました。

「お母さん、その靴、捨てないで」
とタケル君が言いました。
「弟のコウタに あげようよ。まだ履けるし、この靴、すごく良い靴なんだ」

お母さんは笑って言いました。
「そうね。コウタに聞いてみましょう」

小学2年生のコウタは、お兄ちゃんの靴をもらえることになって大喜びでした。「お兄ちゃんが走った靴なんだ。すごい!」

ラン太とラン子は嬉しくてたまりません。
また走れるのです。
また誰かの役に立てるのです。

コウタは毎日この靴で走りました。
学校の体育の時間も、放課後の公園でも、この靴を履いていました。
ラン太とラン子は、また活躍できることが本当に嬉しかったのです。

ある日、お母さんがコウタのために特別な夕食を作りました。


【走った後のごちそうチャーハン】

<材料>
・ ご飯 2杯分
・ 卵 2個
・ チャーシュー 50g
・ ねぎ 1/2本
・ にんじん 1/4本
・ ランナーズスパイス 小さじ2
・ しょうゆ 大さじ1
・ ごま油 大さじ1

<作り方>
1.熱したフライパンにごま油を入れ、溶いた卵を流し込んですぐにご飯を加えて混ぜる
2.みじん切りの野菜とチャーシュー、ランナーズスパイスを加えて炒める
3.しょうゆで味付けして完成


「今日はね、元気に走ったコウタのために作ったのよ」
とお母さんが言いました。
コウタは嬉しそうにチャーハンを食べました。
「明日も頑張って走るね」

ラン太とラン子は、コウタの足を優しく包みながら思いました。
「古くなっても、まだまだ走れる。大切にしてもらえば、ずっと役に立てるんだ」

月日は流れ、コウタは小学6年生になりました。ラン太とラン子は、もうボロボロです。靴底は薄くなり、縫い目もほつれています。

「そろそろお別れかな」とラン太が言いました。
ラン子は笑って答えました。
「そうね、でも私たちは幸せだったわ。たくさん走って、二人の男の子を支えられた。靴としては最高の人生だったと思うの」

コウタは新しい靴を買ってもらいましたが、古い靴を大切に飾っておくことにしました。
「この靴、たくさん思い出があるから」

ラン太とラン子は、飾り棚から見守ります。
これからも、二人の男の子が元気に走ることを。
古くなっても、大切にされる喜びを噛みしめながら。

教訓 一見古いものにも価値があり、大切に使えば人生の役立つのです。
ふたつの足音が、思い出を追いかける。
想い出とスパイスは、まだ走れる。

▶ 次の話 【ジェニファーの台所①「走る、発酵ノート」|プロローグ|第1話 塩麹は女の味方、脂肪の敵】は、12/19(金)20:00に公開予定!